第19回日本集団災害医学会総会・学術集会が2月25日から2日間、都内で行われた。テーマは「災害医学-全ての医療者が学ぶべきもの-」。同学術集会では、昨年11月に発生したフィリピン台風災害への医療支援をテーマとするセッションが急きょ設けられ、NPO法人TMATが当時の活動状況を報告した。

 

フィリピンにおける医療支援で、TMAT本隊(第一陣)隊長を務めた池原医師が登壇。昨年11月12日から2週間にわたる活動の様子を紹介した。

台風30号でフィリピンが被災したことを受け、12日にTMATの先遣隊が日本を出発。フィリピン・セブ島を拠点に情報収集などを行った後、13日から同・レイテ島に入り本格的に活動を開始、16日には本隊(第1陣)が合流した。主に診療を展開した拠点は、タクロバン市から南に約15㎞離れたタナウアン町。町内には複数の診療所があったが、すべて機能していなかったため、市内のシティホールで診療を行った。TMATは2階で外傷の患者さんに対応。1階では医師資格をもつタナウアン副町長が内科・小児科を担当し、隊員は連携を図りながら治療に当たった。後日、多国籍のNGO医療支援チームが合流し、2階でそれぞれ診療活動を展開した。

発表の途中で、池原部医師は動画を用いて診療の様子を説明。屋根がブルーシートで覆われた状態だったため、雨漏りのなかで患者さんに対応したり、トリアージから治療・救急搬送までの流れを構築したりしたエピソードなどを披露した。時間の経過とともに外科的ニーズが減少したため活動を終了、11月23日に帰国した。池原医師は、「ホール前に救急車が待機し、重症患者さんをタクロバン市内の病院に搬送する体制づくりに貢献できたのは良かったと思います」と振り返り、活動期間中に約400人の診療に当たったことを報告。実際に行った診療内容では、デブリードメント(感染・壊死組織を外科的に切除すること)を含む創傷処置や、感染予防のための抗生剤投与が多かったと分析した。また今回の経験から離島災害における被災地へのアクセス確保の難しさを指摘。「日本も島国。各地で行政を交じえ真剣に考えていかなければなりません」と警鐘を鳴らした。

登壇した池原医師
登壇した池原医師