台風18号の影響による大雨は、茨城県をはじめとする関東、東北地方に大きな水害被害をもたらしました。特に、茨城県常総市では鬼怒川が決壊し、多くの住宅が浸水、冠水被害を受け、住民は避難生活を余儀なくされています。NPO法人TMATでは、平成27年9月11日に現地の医療ニーズを確認するため先遣隊を派遣し、現地調査を実施いたしました。

先遣隊 野口 幸洋(TMAT事務局/一般社団法人徳洲会東京本部)

平成27年9月11日(金)

11:00頃

常総市の西側にある、古河市「古河病院」に野口事務局が到着。古河病院の協力を得て常総市の調査を実施することとなった。古河市もこの大雨により水害被害にあい、一時2000名を超える避難者がいたがこの時点ではすでに避難勧告は解除されていた。常総市に向かう前に、古河市災害対策本部を訪問する予定。なお、活動には古河病院 総務課山口係長、医事課石塚氏に同行を頂くことになった。(石塚氏は常総市在住で、父親が常総市役所職員で現在も災害対応をされている。)

13:00頃

先遣隊として現地入りした野口と、山口係長、石塚氏(共に古河病院)の3名は、古河市役所を訪問。災害対策本部を担当されている環境安全部長と面談。古河市はすでに避難勧告は解除されており大きな被害はなかったが、必要であればTMATとして医療支援の準備がある旨を伝え、挨拶をおこなった

13:20頃

野口と石塚氏(古河)の2名で常総市に向かう事となった。

14:30頃

常総市に到着。鬼怒川の水量は通常より多いものの、危険水域ではなくなっている。また鬼怒川に掛かる橋も当初通行止めであったが、通行が可能。鬼怒川を渡り常総市石毛地区へ。堤防沿いの民家ではすでに水は引いているが、屋内まで水が浸入しているため住民が清掃作業をしている。また、何度も報道されていたアピタ石下店近くまで行くと、まだ完全に冠水しており近づけない。アピタ石下店にの残されていた人は救助さている模様。

15:30頃

鬼怒川を戻る形で渡り、避難所となっている石毛総合運動公園内の石毛総合体育館を訪問。多くのマスコミが駐車場にいる。担当している保健師から情報収集。昼間は500名ほどが避難していたが、水が引き帰られた理一時帰宅されている方がいるため3分の1程度まで減っている。医療に関しては大きく体調を崩している方はいないが、我々が到着した時と同時に千葉県DMATが診療ブースを設置し、医療支援を開始するところであった。千葉県DMATと情報交換、活動期間等は未定とのこと。

16:00頃

水海道西部病院を訪問。120床の病院で今回の水害被害はない。医事課職員より情報収集をしたところ、冠水した地域にある医師会病院からの転院受入れは数名したが、患者が殺到したりすることはなく落ち着いているとのこと。

16:30頃

再び鬼怒川を冠水地域側に渡り常総市役所を目指すが、常総市役所周辺が完全に冠水しておりボートでしか市役所にたどり付けない状況であった。この地域にはまだ取り残されている住民が多くいるようで、上空には数多くの救助ヘリが低空飛行していた。また、車が冠水しているためかガソリンが漏れた匂いが鼻についた。常総市役所内には同行していただいている石塚氏のお父様が職員として対応していたため、電話にて支援の準備がある旨を伝えと情報収集を行った。

17:00頃

避難所となっている水海道第一高等学校、水海道小学校(両校は隣接)を訪問。冠水している水海道地域の近い避難所ということもあり、多くの方避難していた。現地保健師やスタッフから情報収集をしたところ、避難から一夜が過ぎ感冒症状、頭痛、内服切れ等の避難者が出てきているとのこと。また車中で生活していると思われる方も多く見受けられた。我々の到着と同時くらいに、古河赤十字の医療支援チームが到着して診療を開始。15名ほどの診療をしており、情報交換をおこなった。赤十字チームはこの避難所の前に4~5ヶ所の避難所を回ってきたとのことで、それまでの避難所では大きな医療ニーズはなかったとのことだった。赤十字チームの活動期間も未定とのこと。

17:30頃

常総市の冠水地域から救急搬送の受入れとなっていた守谷市(常総市の南側)の総合守谷第一病院を訪問。全く混乱はなく、通常の時間外体制であった。

18:00頃

日没のため、本日の情報集活動。

緊急性の医療ニーズは感じられなかったが、避難所生活が継続想定されることから生まれる医療ニーズは考えられる。ただし、すでに地元や近隣県のDMAT、日赤が活動しており、周辺医療機関の混乱もないことから地域での支援で完結できると思われる。明日、TMAT幹部との協議を持って今後の活動について検討する予定。

平成27年9月12日

茨城水害への対応につきまして、昨日TMATコアメンバーによる協議をおこない、

  1. 急性期の医療ニーズは無い
  2. 冠水被害のあった医療機関の患者転送はDMATにより全て完了している。
  3. 避難所での内科的ニーズは発生しているが、地元医療機関や地域の医療支援チーム5チームによる避難所巡回が開始されている。
  4. 周辺の医療機関に混乱はなく、救急搬送受入れ先の病院も帰農している。

以上より、今回のTMATによる派遣は見送ることといたしました。なお、常総市役所には長期的医療支援が必要になった場合にTMATとしての支援の準備がある旨をお伝えしており、今後の要請があった場合は対応を検討してまいります。

引き続きTMATに対するご支援ご協力をよろしくお願いいたします。

決壊した鬼怒川。水位は落ち着いている。

決壊した鬼怒川。水位は落ち着いている。

住宅に浸水、清掃をする住民が多くみられた

住宅に浸水、清掃をする住民が多くみられた

報道でも取り上げられていた「アピタ石下店」

報道でも取り上げられていた「アピタ石下店」

信号機も倒されるほどの被害

信号機も倒されるほどの被害

DMAT隊員と情報交換(石毛総合体育館)

DMAT隊員と情報交換(石下総合体育館)

石毛総合体育館

石下総合体育館

常総市役所周辺。市役所へはボートでないといけない状態(水海道地区)

常総市役所周辺。市役所へはボートでないといけない状態(水海道地区)

水海道小学校避難所

水海道小学校避難所

医療活動を開始した日赤スタッフと情報交換

医療活動を開始した日赤スタッフと情報交換