NPO法人TMATは11月23日~12月1日の間、NPO法人AMDA(岡山県)との共同事業として、バングラデシュに医師2人を派遣しミャンマーの少数派イスラム教徒であるロヒンギャ難民に医療支援を実施した。隊員は河内順医師(湘南鎌倉総合病院副院長兼主任外科部長)と鈴木裕之医師(福岡徳洲会病院救急科医長)

今年の8月以降ミャンマーから隣国のバングラデシュに大量の難民が流入。バングラデシュ南部のコックスバザール県にある難民キャンプで、約80万人が生活している。

バングラデシュ南部の難民キャンプ

バングラデシュ南部の難民キャンプ

TMATは1月、すでに現地で医療支援活動を実施していたNPO法人AMDAバングラデシュ支部の協力の下、事務局の野口幸洋を派遣し現地調査を実施。同支部の活動に協力する形でTMATの派遣が可能か否か探るため、AMDAが仮設診療所を開設しているクトゥパロンというエリアを中心に調査した。その後、AMDAとの共同事業としての活動計画が進み、今回の派遣となった。

医師2名はバングラデシュの首都ダッカからコックスバザールに移動。難民キャンプでAMDAが設置している仮設診療所にて医療支援をスタートした。診療は午前10時から午後2時までで、1日の患者数は120人ほど。TMATとAMDAの医師が協力して診療にあたった。

TMAT医師が地元医師と連携して活動

TMAT医師が地元医師と連携して活動

患者さんの多くは女性と子どもで、外傷はほとんどなく、感冒症状や発熱、消化器症状、皮膚症状がメイン。なかには結核や赤痢など感染症もあった。多くの難民が狭い地域で密集して暮らしているという、感染が広まりやすい環境も要因のひとつだと考えれた。

子どもの患者多い

子どもの患者多い

診療には〝言葉の壁〟が立ちふさがった。TMAT隊員の英語を現地スタッフがベンガル語に通訳、それをさらにロヒンギャ難民のボランティアがロヒンギャの言葉に通訳する段階を踏まなくてはならず、手間や時間を要するため、ジェスチャーなどを駆使してコミュニケーションを取る必要があった。そんな中でも現地医師と診療方法について協議し、TMAT医師が中心となり血圧計や体温計、パルスオキシメーターなどを用いて診察の前のバイタル確認を徹底、診療をスムーズに行えるよう努めた。

また医薬品は外国からの持ち込みが厳しく規制され、バングラデシュ国内の医薬品のみを使用。このためTMAT隊員は現地の医薬品の商品名や用量などを事前に学習したり、現地スタッフに聞いたりしながら診療の補助を行い、投薬についてのアドバイスを行った。

その他日本から持参したポータブルエコーを活用し、腹部診察などに役立てた。

ポータブルエコーで診察

ポータブルエコーで診察

鈴木医師は感想として「TMATとして、初めての難民への医療支援でした。TMATはこれまで災害時の支援を行ってきて、医療と同時に避難所の環境整備などにも尽力してきました。今回は短期間の派遣だったので、そこまでできませんでしたが、先の見えない事態に対し、どこまで支援ができるか課題だと思います」と振り返っていた。

医師2名は12月1日早朝に帰国し、TMAT初の難民医療支援活動は終了となった。緊急時の災害医療支援を中心として活動してきたTMATだが、今回の経験を活かし難民医療支援についても模索している予定である。

協同事業として活動したAMDAメンバーとTMAT

協同事業として活動したAMDAメンバーとTMAT