2020年九州南部豪雨(熊本県)
TMAT災害医療活動報告 1報

2020 年 7 月 5 日 23:00

第1報

7 月 4 日
梅雨前線の影響で九州南部は 4 日、記録的な大雨に見舞われ、気象庁より熊本県と鹿児島県に大雨特別警報が出される。

早朝
TMAT 事務局にて情報収集開始。

11:00 頃
熊本県球磨川の複数個所で氾濫が発生し、大規模な水害被害が発生。被害の大きさを鑑み、先遣隊派遣を視野に準備。尚派遣の際は、新型コロナウイルス感染症の対策を十分に講じたうえで実施する。

15:00 頃
先遣隊派遣を決定する。メンバーは以下の通りであり、明日早朝 6時に緊急車両にて出発し、熊本県庁にてまずは情報収集をする予定。

●活動メンバー
鈴木 裕之 医師 (福岡徳洲会病院所属)
坂元 孝光 医師 (福岡徳洲会病院所属)
川添 陽介 看護師 (福岡徳洲会病院所属)
和田 秀一 看護師 (福岡徳洲会病院所属)
西原 健太 事務 (福岡徳洲会病院所属)
計 5 名

7 月 5 日
6:30 頃
先遣隊 5 名が福岡徳洲会病院を出発する。予定通り熊本県庁を目指し、情報収集を行う。
一部規制がかかっていた高速道路も、今朝には解除されている。
現地は雨予報の為十分に注意して移動し、常にサージカルマスクの着用、対面活動時にはフェイスシールド等目の保護を実施して感染対策を徹底する。

8:10 頃
熊本県庁到着。情報収集をおこなった結果、人吉市(多摩地域)の被害が甚大であるとの情報。
現地の医療調整本部が熊本労災病院(八代市)に設置されており、そこで再度情報収集を行うよう提案された。

8:45 頃
熊本地震・西日本豪雨・2019 年台風 19 号災害支援で活動した浦部優子医師が、所用で熊本県内に滞在していたこともあり、先遣隊チームと合流する。救急車両とレンタカーの 2 台で行動する。

9:30 頃
八代市の熊本労災病院に到着。情報収集の結果、複数の DMAT 隊(熊本県内・福岡県内中心)が入っているが、
まだ病院の被災状況も把握できておらず、DMAT は手分けして直接病院の状況確認をするところであった。
避難所に関する情報はまだほとんど把握されていない状況。
TMAT は 2 チームに分かれ、人吉市と(坂元、鈴木、和田、西原)、芦北町(浦部、川添)の保健所及び
避難所で情報収集を行う。

情報が少ない状況下での情報収集は今後の地域支援にとって重要なものになるので、
今回の活動では現場での支援ニーズと併せて、できるだけ多くの避難所情報を医療調整本部に報告することも重要な任務として
活動する。またこれからの活動は対面での調査となる為、感染対策(マスク着用、手指衛生、目の保護)を徹底する。

【芦北町チーム】
11:30 頃
芦北町役場で情報収集。熊本日赤チームが入っており、こちらからも情報収集。
医療ニーズはないため日赤チームは本日で撤収とのことであった。
避難所については、午後から芦北町と水俣市の保健師が合同で巡回をする予定とのことで、同行することとした。
避難所は芦北町に 6 か所ほどあり、夜に 100 名ほど避難者になる避難所もあるとのこと。
また、水俣市も被害が大きかったようで、芦北町の避難所調査終了後、水俣市保健師からの情報収集も行った。

15:40 頃
保健師との巡回アセスメントが終了し芦北町役場の会議に参加。
水俣市からの応援の保健師チームは落ち着いており継続支援の必要はないとの印象。
水俣市内の医療機関はあまり被災していないとのことであった。
芦北町での活動については、夜の TMAT チームのミーティングで協議の上決定する事とした。

18:30 頃
熊本労災病院内の医療調整本部に芦北町での避難所アセスメントについて報告。
調整本部からは、芦北町の情報がなかったため大変感謝された。
さらに、夜間 100 名を超える避難所がある旨を伝えたところ、その状況もぜひ確認してきてほしいとの打診をうけ、
21 時頃に再度芦北町の避難所に状況確認に向かう予定とした。

20:20 頃
八代市から再度芦北町に向けて出発。なお、高速道路はすべて通行可能で、八代市から芦北町の避難所までは安全なルートで侵入が可能。

21:25 頃
芦北町交流センター到着。町役場役員 4-5 人で夜間担当(昼から交代していない担当者有)。
避難者は 56 名。床に寝ているもののスペースの確保は充分とれている。
今夜はおそらくこれ以上増える見通しなしとのこと。認知症の避難者 2 名、寝たきりで要介護の避難者 1 名。
認知症の夫婦は町役員が介護、寝たきりの方は家族つきそい。明日以降は福祉課と相談した上で移動も検討しているとのこと。
夜間でも連携が取れている模様。少なくとも医療チームの駐在の必要性は低いと判断。雨が強まっているため、
もう一カ所の避難所の評価は見送ることとし、安全確認を十分行いつつ宿舎に戻る。

22:30 頃
宿舎に到着。事務局と情報共有の為 web ミーティングを実施。明日の方針を決めた上で、本日の活動を終了とした。

【人吉市チーム】
12:30 頃
人吉保健所に到着。保健所長が会議中、保健師がスクリーニング活動中との事であり状況確認ができないため、
まずは一番大きな避難所の「人吉スポーツパレス」に向かうこととした。

13:45 頃
人吉スポーツパレスで聞き取り。報道にある通り、綺麗に区画されており衛生環境は問題なかった。
ただし医療の介入はなく、市内の病院の多くが機能不全状態のため、一定の診療ニーズはありそうとの見解。
仮設診療所を作る事も検討とのことである。また、現地調査をしている他チームより球磨村総合運動に視察依頼あり。
「地べたに 300 人ほどの避難者がいる。救助された人がヘリでどんどん運ばれている状況」との事。球磨村総合運動公園に向かう。

14:00 頃
球磨村総合運動公園のさくらドームを鈴木石、和田看護師が視察。壁のむい吹き抜けの施設(避難所)に、孤立地域から救出された避難者を中心に 200~300 名程度が生活している状況であった。
すでにPeace Wins Japan(NGO)が活動しており、鈴木医師と和田看護師も診療支援に入る。Peace Wins Japan の持参医薬品等を借り、常用薬の処方希望、軽微な外傷等共同で 32 名の患者を対応した。

14:30 頃
坂元医師、西原調整員は球磨工業高校と人吉第二中学校の避難所を視察。
アセスメントについては、夜は多数の避難者がいるとの事だが、日中は 20 名ほどのみであった。
避難所に常駐する看護師より依頼され、坂元医師は外傷の処置とアレルギー性皮膚炎の治療を行った。

16:30 頃
坂元医師・西原調整員は人吉保健所を再訪し、再度 TMAT との連携をお願いした。
未だ保健所でも各避難所の状況を把握できておらず、球磨村総合運動公園(桜ドーム)の状況を説明した。

17:30 頃
熊本労災病院内医療調整本部より病院調査のため派遣された DMATが人吉医療センターに入り、同地域の被害が甚大であることから、本日夕方より人吉医療センター内に人吉市の医療調整本部が立ち上
がった。鈴木医師・和田看護師と合流し、人吉医療センター地域医療調整本部へ向かい、明日も Peace Wins Japan と協働し、球磨村総合運動公園(桜ドーム)での継続する事を確認した。

18:30 頃
人吉医療センター医療調整本部にて最初のミーティングが開かれ、複数の DMAT チーム、TMAT、Peace Wins Japan が参加。TMAT チームより、避難所の状況を報告し、仮設診療所、モバイルファーマシーの必要性などを報告した。
なお人吉医療センターの1階が浸水していたが、現在は復旧しており病院機能も維持されている。

19:30 頃
八代市の宿舎へ向けて出発。

20:00 頃
宿舎到着

22:30 頃
メンバーと事務局で web ミーティングを実施。本日の情報の共有と今後の方針について協議した。これをもって本日の活動は終了とした。

本日の活動より、現地からの報告によると、特に人吉町は医療機関が機能していないうえ、
衛生・生活環境が十分でない避難所に複数避難者がいることが確認されている。現時点では、継続的に医療支援及び避難所支援のニーズが高い状況であると考えているため、本隊派遣を視野に今後の活動方針を決めた。

先遣隊メンバー

医療調整本部で情報収集

河川氾濫による被害

河川氾濫による被害

球磨村総合運動公園 屋外避難所

芦北町保健師などと情報共有

事務局担当
野口 幸洋 (NPO 法人 TMAT / 一般社団法人徳洲会東京本部)
阪木 志帆 (NPO 法人 TMAT / 一般社団法人徳洲会東京本部)
文責 事務局 野口 幸洋
【2020九州南部豪雨】活動報告第1報PDF