令和6年能登半島地震 TMAT災害医療活動報告

2024年1月2日22:00

第1報

1月1日
16:10頃

石川県能登半島北部で発生した地震により、石川県志賀町で震度7、マグニチュード7.6を観測。海側では大津波警報が発令された。地震被害及び避難所支援ニーズの拡大が予想されるため、TMATは先遣隊の派遣を視野に情報収集を開始。

21:00 頃

TMAT先遣隊派遣決定。大阪から1チーム、関東から2チームの派遣で調整。

23:00 頃

先遣隊第1班4名 藤沢チームが神奈川県藤沢市(湘南藤沢徳洲会病院)の緊急車両にて出発。石川県金沢市にある石川県庁災害対策本部にてまずは情報収集を行う予定。山中の移動を避けるため、名古屋から北上して石川県へ向かう。メンバーは以下の通り

先遣隊第1班【藤沢チーム】
髙力 俊策 医師 (湘南藤沢徳洲会病院 / TMAT理事)
佐藤 哲也 看護師(湘南藤沢徳洲会病院)
久保 健一 看護師(湘南大磯病院)
猪狩 佑介 ロジ (湘南藤沢徳洲会病院)

左から久保看護師、髙力医師、佐藤看護師、猪狩ロジ

1月2日
5:00頃

先遣隊第2班 大阪チームが大阪府松原市(松原徳洲会病院)を東大阪徳洲会病院緊急車両にて出発。メンバーは以下の通り

先遣隊第2班【大阪チーム】
當麻 俊彦 医師 (八尾徳洲会総合病院)
山根 明 看護師 (松原徳洲会病院)
家口 輝 理学療法士(松原徳洲会病院)

左から當麻医師、家口理学療法士、山根看護師

6:45頃

先遣隊第1班藤沢チームが石川県金沢市の石川県庁に到着。高速道路は加賀インターまで使用出来たがその先は通行止め。そこから一般道で金沢市に向かったが、道路状況は順調であった。石川県庁の保健医療福祉調整本部にてチーム登録及び情報収集を実施。DMAT統括医師より、能登地域の2つの病院から病院避難の要請(志賀町と輪島市)があり、DMATは病院支援を中心に対応。避難所は開設されていることは把握しているが、その状況までの把握は出来ていないとのこと。能登医療圏は七尾市にある能登総合病院が活動拠点本部となっているため、能登総合病院の統括医師に取りついで頂き、同院へ向かうこととした。地震被害で道路状況が刻々と変化しているが、石川県庁から能登総合病院まで1時間半ほどで行けるとのこと。

9:00頃

先遣隊第1班藤沢チームは七尾市・能登総合病院のDMAT活動拠点本部にて情報収集。同院内部も壁の損壊や一部ライフラインの停止等の状況は見受けられるが、病院機能は維持できている。現在DMATは県内チームのみ活動中であるが、地震の被害による被害で道路状況が悪く被災地にたどり着けない状況であるとのこと。また、能登地域の病院の状況把握にも苦慮しており、避難所情報は全く把握できていないとのこと。
DMAT活動拠点本部より、①輪島市へ向かうルート状況が不明のため、輪島市に向かいルートの確認をしていただけると助かる。②富来町の避難所に重症患者が10名ほど避難しているとの情報があるので、医療ニーズの評価をしてほしいとの依頼があり、富来町へ立ち寄ったうえで、輪島市を目指すこととした。輪島市では、市立輪島病院での情報収集及び輪島市役所・保健所等で避難所の情報収集を行う予定。
先遣隊第2班大阪チームは加賀インターに到着。その先高速道路は依然通行止めのため、一般道で先遣隊第1班藤沢チームが向かった七尾市・能登総合病院に向かう。

9:30頃

能登総合病院DMAT活動拠点本部より連絡があり、②富来町避難所の重症患者情報については消防が対応するとのことであったため、先遣隊第1班藤沢チームは直接輪島市に向かうこととなった。なお、能登地域はガソリンスタンドに長蛇の列が出来ており、ガソリン調達が困難な状況である。

10:00頃

先遣隊第2班大阪チームが金沢市内に到着。先遣隊第1班藤沢チームからの情報により、金沢市内にて必要物資を調達してから能登地域へ北上することとする。なお、金沢市内のガソリンスタンドも長蛇の列が出来ている。

10:20頃

震度5弱の地震発生。第1班・第2班ともに問題なし。

10:30頃

先遣隊第1班藤沢チームは輪島市に向けて北上。途中道路が陥没しており通行止めが多く発生している状況を確認。

11:15頃

先遣隊第1班藤沢チームは七尾市と輪島市の間にある穴水町を通過。穴水町も建物被害が確認できる。

13:00頃

先遣隊第2班大阪チームは、金沢市内での物資調達完了し、能登地域へ向けて出発。先遣隊第1班藤沢チームを追う形で七尾市、穴水町方面へ向かう。
なお、先遣隊第3班四街道チームは20:00出発(千葉県・四街道市)予定で準備を進めている。

14:00頃

先遣隊第1班藤沢チーム、輪島市・市立輪島病院に到着。穴水町から輪島市までは約20kmであるが、地震の被害による道路の陥没や通行止め等を回避し徐行で進んだため約4時間の時間を要した。陸路で輪島市まで到達できる旨と所要時間、ルートについて能登総合病院のDMAT活動拠点本部に報告した。

14:30頃

先遣隊第1班藤沢チームは市立輪島病院で情報収集を行った。同院ではライフライン被害が出ているが、現在は中等症患者(トリアージ黄)までは対応しているが、重症患者(トリアージ赤)は自衛隊やドクヘリで空路搬送を行っている。本日も重症患者10数名搬送されており、亡くなられた患者もいる。現在、石川県内のDMATチーム1チームのみが支援に入ってる状況で、医師は10名ほどで対応。明日以降、中部エリアの県外DMATチームの支援が見込まれているが、それまではスタッフが不足している。周辺避難所の状況は全く把握できておらず、避難所から搬送されてくる患者のみ対応している状況。県内DMAT1チームとTMAT以外医療支援チームが輪島市に入っていることは確認できていないとのこと。
避難所の状況を把握するために、輪島市役所や保健所を訪問し情報収集をする旨を同院対策本部医師に伝え、引き続き連携していくことを確認した。

15:30~19:00
【先遣隊第1陣(藤沢チーム)】

輪島市役所に到着。市役所は避難所と化しており、市役所本館に500人程度避難している。また市役所周辺の行政関連施設に300人~500人避難している施設が他に3か所程度あるとのこと。市の職員が対応している状況で、町の保健師を含め医療的介入は行われていない。また、外部からの支援団体も全く入っておらず、避難者の健康状態を気にしていた市職員から医療的介入を依頼された。
周辺の避難所含めて、早速巡回してアセスメントを行うこととした。
輪島市を管轄している、能登北部保健所に到着。保健所は職員、住民含めて人数は少ない。年末年始で保健師が出勤できておらず、保健師による活動は行われていないことを確認。
避難所での情報収集中、脳出血疑い患者を診察。救急受診の必要ありと判断し、藤沢チームの救急車で市立輪島病院へ搬送を行った。
その後藤沢チームは二つに分かれて大規模避難所での情報収集及びアセスメントを実施。一斉に避難した住民の対応が追い付いていない状態で、避難所は土足、体育館などもすし詰め状態で衛生環境の問題が確認された。
また、市役所を中心とした施設、学校だけでも合計で1000名~2000名が避難していることを確認。市の職員によると、半数はライフラインの問題と余震の怖さで避難している人だが、残り半数は建物被害で長期避難が必要になる人であろうとのこと。
本日は、輪島市役所に滞在し引き続き明日も同地域で情報収集及び避難所アセスメントを行うことを確認。市役所近くにある合同庁舎の一角をTMATに提供いただき、本日はここを拠点に休息することとした。

【先遣隊第2班(大阪チーム)】

15:30頃、穴水町役場に到着。穴水町町長と面談し、町の被害は甚大で多くの避難所が設置されているが、なんとか町の職員や保健センター職員で管理しているとのこと。
町の公立病院(公立穴水総合病院)と多くの方が避難している避難所へ情報収集に向かうこととした。
公立穴水総合病院に到着。同院には100人ほどの入院患者がいるが、慢性期疾患患者が多く、重症患者はいない。病院機能は何とか維持できている状況。穴水町で建物の下敷きになっている住民が複数いるとの情報があり、その患者についての受入れ準備をしている。DMATを含めて現時点で医療支援チームの介入はされていない。
100人以上避難している避難所を3か所訪問。いずれも町の職員や保健センター保健師などが対応してる。物資不足やスタッフ不足はあるが、何とか対応出来ているとのこと。また、集落ごとにも複数の避難所が設置されており、各自治会などで対応しているとのことであった。支援団体は入っていない。
公立病院が機能しており、避難所も比較的管理出来ている状況であったが、支援チーム介入がないため支援ニーズは高い地域と考えらる(穴水町は人口8500名の小さな町だが、大部分が避難している)
一旦金沢市内に戻り、輪島市に入った先遣隊第1班藤沢チームと情報を共有し、明日の活動を決定することとした。

20:00頃

先遣隊第3班四街道チームが千葉県四街道市(四街道徳洲会病院)を四街道徳洲会病院緊急車両にて出発。途中神奈川県内で村田医師と合流する。
メンバーは以下の通り

先遣隊第3班【四街道チーム】
医 師 村田 宇謙(湘南鎌倉総合病院)
看護師 大川 貴弘(四街道徳洲会病院)
薬剤師 柳川 拓哉(四街道徳洲会病院)
広 報 松井 秀裕

左から柳川薬剤師、村田医師、大川看護師

20:30頃
先遣隊第2班大阪チーム、金沢市内に到着。本日は金沢市内の宿舎で休息をとる。本部事務局及び先遣隊第1班藤沢チームと協議を行い、道路事情などから孤立している輪島市の支援ニーズが最も高いと判断し、明日早朝に第2班大阪チームと第3班四街道チームが金沢市内で合流し、2隊で輪島市へ向かうことを決定した。

21:00頃
先遣隊第1班藤沢チーム、現地関係者とのミーティングを終え本日の活動終了。明日は、午前中に大規模避難所のアセスメントを行い、市立輪島病院との連携確認、先遣隊第2班(大阪チーム)及び先遣隊第3班(四街道チーム)の受入れを行う予定。

先遣隊の活動により、今後輪島市を中心とした支援の方向で検討しております。
現地の状況は非常に深刻で、今後本隊派遣を視野に準備をしております。

なお、令和6年能登半島地震 TMAT支援活動のクラウドファンディングを開始いたしました。ご支援ご協力をお願いいたします。

TMAT令和6年能登半島地震クラウドファンディング

事務局担当
野口 幸洋(NPO法人TMAT 事務局長 一般社団法人徳洲会東京本部)
阪木 志帆(NPO法人TMAT 一般社団法人徳洲会東京本部)

文責 事務局 野口 幸洋

【令和6年能登半島地震】活動報告第1報PDF