3月20~22日、「第1回災害救護・国際協力アドバンスコース」が千葉県の四街道徳洲会病院にて開催されました。北は北海道、南は徳之島から、総勢21名の受講者が集まりました。本コースは実技訓練が多く、「ベーシックコース」よりも国際協力経験についての具体的な内容に重点が置かれ、現場で活かせる知識と広い視野、モチベーションを提供できるプログラムになっています。
このコースの担当責任者である原野和芳医師(四街道徳洲会病院 院長)は災害救援活動のリーダーを育成するのみならず、現在世界で起こっている医療を取り巻く社会問題、とりわけ「貧困」に対して個々人が「人」としてどのように責任を持つか、持とうとするかを問い、行動することを促すことが根幹として構成されています。ぜひ今後も一人でも多くの方が受講していただきたいと願っています、と述べました。
講義では経験や実務を紹介した「WHO(世界保健機関)とCDC(米国疾病予防管理センター)について(田中政宏氏 大阪府立成人病センター)」や「国際医療協力を失敗より学ぶ(原野和芳医師 四街道徳洲会病院)」、JICA(国際協力機構)の青年海外協力隊としてウズベキスタンで技術移転協力の経験を持つ板脇典子看護師(四街道徳洲会病院)の体験談などの人気が高く、ほとんど知らない話だった、非常に勉強になった、感動したといった感想が寄せられました。
初日には3時間以上をかけて行うPCM(プロジェクト・サイクル・マネジメント)の実技がありました。PCMとは計画・実施・評価という流れをひとつのサイクルとしてプロジェクトを運営管理する手法です。今回は新型インフルエンザ対策をどのように進めるか、という課題に対し、4グループがそれぞれPCM手法に則ってプロジェクトを練り上げました。このPCMによる問題解決へのアプローチは仕事に応用できそうだと好評でした。
二日目には新型インフルエンザ蔓延期を想定した発熱外来の実技訓練を行いました。病院スタッフや近隣の方々が患者役に扮して徒歩または車で来院。受講者はPPE(特殊なマスクなどの個人防護具)を着用して感染を防ぎながら診断し、自宅療養、入院または他病院への搬送などと振り分けていきます。判断を迷っている間に大勢の患者さんに取り囲まれてしまったり、症状が悪化してしまう方がいたりと、受講者は汗をかきながら対応に追われていました。訓練後に反省を行う中で、薬剤の処方や搬送の方法についてもチェックリストがあれば完結に情報伝達できるのでは、といった意見が出されました。
三日目はエマルゴ(机上訓練用のシミュレーションキット)を用いた大規模災害シミュレーションを実施しました。災害発生時、短い時間で的確な判断・意志決定を行い、限られた(医療)資源を最大限に有効活用し、最大多数の被災者を救うという机上訓練です。参加者は事故発生現場の救護所、災害対策本部、搬送先の病院などに分かれ、次々に現れる被災者をトリアージし、どの病院に搬送するか、手術をするか、応援を要請するか、別の病院に転送するかなどを決定していきますが、素早く優先順位つける難しさを実感していました。訓練後には、実際の現場はもっと混乱しているだろうことが少し想像できた、一層興味が沸いた、といった声が聞かれました。このような受講者からの感想に対し、インストラクターの橋爪慶人医師(岸和田徳洲会病院)は、ベーシックコースで学んだ情報伝達の基本である「CSCATTT」に触れ、情報は大切だが何を伝えなくてはならないか優先順位を考えなくてはならない、実際に患者さんを助けることに結びつける難しさを実感してもらえたのでは、とコメントしました。